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不適切保育と園長のマネジメントについて

最近、不適切保育に関するニュースを多く目にします。
顧問先の経営者から、不適切と思われる保育を行っている職員がいても、園長が注意・指導をしないといったご相談がありました。
意外にも園長先生たちも中には、「虐待・不適切保育が疑われるときに、どう対処してよいか分からない」といった戸惑いがあるようです。

では、なぜ「よい保育ではない」というときに注意・指導できないのでしょうか。理由はさまざまありそうです。

①実際の現場を見ていない

各クラスで起こっていることを、全て園長先生が把握するのは難しいのが実情です。
また、見えないところで不適切な保育を行っているケースもあります。
疑いがあって、該当の職員に問うても「やっていません」と言われてしまえば成すすべがありません。

防犯カメラを設置している園もありますが、普及していない園も多いのが現状です。

②自信がない

不適切保育の行為者が、園長先生よりもベテランの保育士だった場合、遠慮して指摘できな
い。また園内で力を持った保育士の場合、言っても聞いてもらえない。
お問い合わせの中には、職員の力関係が逆転してしまっている保育園も中にはありそうです。

③注意指導の仕方がわからない

②の自信がないにも通じますが、「どう注意・指導すればいいかわからない」というお声を聞きます。
昨今は「パワハラ」の言葉が独り歩きし、適切な指導にも関わらず、意に沿わないことを言われると
「園長先生が私をパワハラしている!」と訴える職員もいます。

そのためパワハラを恐れて、適切であっても注意ができないという関係が出来上がっています。
ハラスメントに対する正しい知識と適切な指導方法を学んでいく必要があります。

先日、保育イノベーションでもハラスメント勉強会を開催いたしました。その時の動画も是非ご参考にしてください。

動画:保育労務勉強会①「ハラスメント対策~ハラスメントとは~」

虐待や不適切保育といった問題は、注意指導にとどまらずその後、懲戒処分に発展するケースもあります。
決めつけでことを進めずに、本人や周りの保育士の話を十分に聴き、客観的な証拠を積み上げたうえで、
ルールに則り、毅然と対応する必要があります。

④コミュニケーション不足

園長先生は、職員からの相談や面談など、日々、職員と向き合って話す機会があるでしょうが、十分でない可能性もあります。
日々のコミュニケーションが不足していると、信頼関係も築けておらず、いざという時に大事な話が伝わらないことがあります。
日頃から職員とのコミュニケーションも非常に大切になります。

⑤不適切保育に対するあいまいな理解

殴る蹴る、性的虐待、園児の人格を否定する発言といった明らかに問題がある「虐待」の行為と、
保育中の安全確保のために、とっさに園児の腕を強く引っ張った、大声を出して「何度言ったらわかるの!?、危ないって言ってるでしょ!!」と言う等、
「良くない言動」と大きく2種類に分かれます。

「虐待」については、すぐにでも阻止すべき問題ですが、「良くない言動」については、保育士間でもそれぞれ感じ方が違うのではないでしょうか。

特に年配の職員と若手職員には差が生じやすいです。”一斉保育”が行われていた時代と今の保育所保育指針に基づく”一人一人を大切にした主体的保育”では大きな差があります。以前は不適切とは思われなかった保育が、今は「不適切」と言われてしまう可能性も高いです。

価値観によって揺らぐようなあいまいな行為を見ても園長先生が「問題だ」と感じない場合もあります。
また、とっさの注意等が必要な原因が「職員の人手不足によるもの」「職員の疲れ」であれば、尚更、指導できないかもしれません。

令和3年3月に厚労省外部委託による、                               令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 「不適切保育に関する対応について」事業報告書
不適切な保育の未然防止及び発生時の対応についての手引き
が出されており。非常に参考になります。

ここでも不適切保育が生じる背景として
「保育士の認識の問題」と「職場環境の問題」が挙げられています。

保育士の不適切保育に対するあいまいな理解の差を埋めるためには、園として統一した指標が必要になってきます。

園内で研修や勉強会を開催し話し合うことも大切ですし、自治体等が出している「チェックリスト」を活用して、自分自身で日頃の保育を振り返ることも大切になってきます。

こういったチェックリストを活用することで以下の利点もあると思います。

  1. 自分自身の行動を振り返り気づきを得る
  2. 同じ視点で保育に携わることで職員間での抑止力になる。
  3. 一般的な指標があることで注意指導がしやすくなる

 

職場環境の問題については、以前、弊社のコラムでも「不適切保育と労務管理」について詳しく記載しておりますので、
こちらのコラムも是非ご確認ください。

コラム:不適切保育と労務管理、法律に則った対応に関する検討

 

最後に、職場環境の問題には、園長先生のマネジメント力が不可欠です。
適切な指導注意が行われない職場ではモラルが崩壊し、不適切な保育や悲惨な事故、職員間でのトラブルも
起きやすくなってくるのではないでしょうか。

 

保育イノベーションでは、社会保険労務士の立場から、保育園の労務・職場環境の改善に携わらせて頂いております。
コラム、動画、研修、セミナーによって、各園のお悩みに一つずつ向き合っております。相談ひろばにもお気軽にご相談ください。

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