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保育園で休業をともなう労災事故が起こった場合

保育士のお仕事は、体を使った遊びや園児の予想外の行動に瞬時に対応しなければならず、日々、注意を払ってお仕事をされているかと思います。また、年配のベテラン保育士も多数在籍しているのも特徴です。
そうした保育現場で時々ご相談を受けるのが、業務中の労災事故です。
園庭で遊んでいて転倒や園児をかばっての負傷、園児を見ながらの移動による激突など、さまざまです。
厚生労働省「職場のあんぜんサイト」令和2年労働者死傷病報告の死傷災害発生状況によると、保育業を含む「保健衛生業」でもっとも多い事故は「転倒」、ついで「動作の反動・無理な動作」による事故が多数を占めています。
また、年齢別で見ると、60歳以上が一番多く、ついで50歳~59歳の事故が多くなっています。
≪参考HP:厚生労働省、「職場のあんぜんサイト」> 労働災害統計 (令和2年)≫ 「労働者死傷病報告」による死傷災害発生状況(令和2年確定値) 

今回は、保育園の仕事を行うにあたり業務災害が発生し、骨折など大きなケガにより休業が必要になった場合の対応について説明します。

【1.労災保険を使う

当たり前のことですが、病院では業務中のケガであることを伝え、必ず労災保険を使ってください。
健康保険は、労働災害とは関係のない傷病に対する保険給付ですので、自身の保険証は使いません。
労災保険と健康保険では給付内容も異なります。また、労災保険を使わないことで、「労災かくし」となり、会社が刑事責任を問われるなど大きな問題となることがあります。
1)病院が労災指定医療機関の場合・・・「療養補償給付たる療養の給付請求書」を会社が記入して医療機関に提出してください。本人に医療費の負担はありません。
2)病院が労災指定医療機関でない場合・・・一旦療養費を立て替えて支払い、後日「療養補償給付たる療養の費用請求書」を会社から管轄の労働基準監督署に提出することで費用が支払われます。

 

【2.死傷病報告の提出

事業主は、業務等により労働者が死亡または休業した場合には、「労働者死傷病報告」を労働基準監督署に提出する必要があります。
1.の療養補償給付の請求をしていても、以下の書類を提出する必要があります。
労働者死傷病報告等は、休業日数によって提出する書類が異なります。以下のとおり、忘れずに提出しましょう。

 

提出書類

提出時期

死亡、休業4日以上

労働者死傷病報告様式第24号

遅滞なく

休業1日~3日以内

労働者死傷病報告様式第23号

四半期分を取りまとめて報告

休業なし

提出不要

 

【3.休業補償の支払】

本来、労働者が休業する場合は、事業主は労働基準法76条により休業補償を行わなければいけません。
ただし4.で説明します労災保険の休業補償給付が行われる場合は、労働基準法上の補償責任を免れます。
しかし、休業の最初の3日間については、労災保険から給付されないため、労働基準法で定める平均賃金の60%を事業主が直接労働者に支払わなければいけません。
この3日間の休業補償については、支払い漏れがないよう、給与計算時には十分注意してください。
なお、休業補償は平均賃金の60%と、一般には1日の労働賃金より低額のため、労働者が年次有給休暇の使用を希望する場合は、年次有給休暇で処理することも可能です。
しかし、事業主より一方的に年次有給休暇の使用を強制することのないようにしましょう。

 

【4.休業補償給付の請求】

労働者が休業する場合は、第4日目から労災保険の休業補償給付が支給されます。
「休業補償給付支給請求書」を管轄の労働基準監督署に提出しましょう。
休業補償給付は、給付基礎日額(労災事故発生日の直前3ヶ月間の平均賃金)の80%(休業特別支給金を含む)が支給されます。

 

労災事故は、予期せぬタイミングで起こりますので、日頃から手続きの流れなどを把握し、事故が起こった場合は、迅速に対応できるようにしましょう。
また、東京労働局ではリーフレット「保育・児童施設の皆様へ 労働災害を防止しましょう!」を作成しています。
≪参考HP:東京労働局、ニュース&トピックス > トピックス > 2018年度 > Safe Work TOKYO ~労働災害防止のための取組を推進中です!~≫「保育・児童施設の皆様へ 労働災害を防止しましょう!」
園児の安全対策同様、職員の労働災害防止対策にも努めていきましょう。

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