【2024年10月】最低賃金改定に伴い対応すべきこと~7つのポイント~
厚生労働省より、全国の最低賃金の答申の発表がありました。適用は2024年10月~となります。全国で1時間当たり50円前後、最低賃金が上昇し、改定後の全国平均額は1,055円となります。
最低賃金の改定に伴って対応すべき7つのポイントをまとめました。
1.最低賃金は施設の所在地ごとに異なる
最低賃金は施設の所在地(労働保険番号を取得している管轄の労基署)がある都道府県の金額となります。本社の都道府県の最低賃金が適用されるわけではありませんので、複数の地域で保育園を経営されている事業主様は各施設の最低賃金をご確認ください。
また、都道府県をまたいで人事異動がある場合も、賃金見直しの必要がありますのでご注意ください。
2.最低賃金の適用期間
東京都の場合、適用時期は2024年10月1日となります。給与計算との関係でいくと
・月末締め翌月〇日支給→10月の勤務分について、11月の賃金支払いから適用となります。
・15日締め月末支給→9月16日~9月30日の分と10月1日~10月15日の分で、後者が適用になりますが、給与計算が煩雑になるため、多くの法人では9月16日~賃金改定をするようです。
3.時給者の賃金見直し
たとえば東京都(2023年9月までの最低賃金は1,113円)で考えますと、2024年10月1日より最低賃金は1,120円となります。現時点で、時給1,120円等のパート職員については、10月1日以降は、1,163円以上に改定する必要があります。
ただし、月額支給の手当についても、時給単価に含めることができます。
具体的には、月120時間勤務の労働契約で、時給1,120円、月額の資格手当6,000円のパート職員の場合
6,000円÷120時間=50円
1,120円+50円=1,170円>1,163円となり、2024年10月1日以降の最低賃金を上回ることとなります。
【ポイント】
最低賃金の対象となる賃金、ならない賃金が決められています。以下の賃金については、最低賃金の対象とはなりませんので、上記の資格手当のように計算の基礎に含めることはできません。
(1)臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
(2)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
(4)所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
(5)午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
(6)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
※「住宅手当」については最低賃金の計算基礎に含めます。
詳細については厚生労働省「必ずチェック最低賃金」をご参照ください。
なお、処遇改善について、最低賃金の対象となる賃金に含めていいのか、自治体によって見解が分かれます。認可園の場合は、自治体にご確認のうえ、ご対応ください。
企業主導型保育園については、児童育成協会より以下の回答が出ております。
「本来は、最低賃金を満たした上で、処遇改善を実施することが正しい処遇改善の実施方法となりますが、処遇改善等加算を最低賃金に充当することを妨げるものではありません」まずは、自社の賃金において最低賃金を満たすことが望ましいかと思います。
4.時給者だけでなく月給者にも最低賃金は適用
たとえば東京勤務、保育補助等で月160時間勤務、月額185,000円の賃金の方がいた場合、時間単価は185,000円÷160時間=1,156.25円<1,163円(東京の最低賃金)を割り込んでしまいます。
このように、月額であっても時間単価を算出し、その単価が最低賃金を上回っている必要があります。
【ポイント】
定額時間外手当が支払われている場合、定額時間外手当については「所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金」に該当しますので、最低賃金の単価に含めることはできません。
5.労働条件通知書の再発行
時給又は月給の変更は労働条件の変更にあたりますので、労働条件通知書の再発行が必要です。※時給または月給以外の部分で労働条件に変更がなければ、給与額改定通知書の発行でも問題ありません。
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6.求人の時給(月給)見直し
賃金テーブル等を変更した場合、または最低賃金に合わせて時給を見直しした場合には、2024年10月1日以降の求人についても修正をお願いします。
ハローワークの求人や、民間の求人サイトについてはチェックが入りますが、園独自で作る貼り紙やチラシ、ホームページについては特に注意が必要です。
7.社会保険の随時改定(月額変更)の可能性も
最低賃金の改定に伴い、時給又は月給の変更を行った場合も、固定的賃金の変動にあたるため、社会保険の随時改定(月額変更)の可能性があります。時給としては、50円程度の変更であっても、たまたま改定後の3ヶ月間のシフトが多く入っていた、時間外労働をしたという理由で2等級の変動が起こる可能性もあります。随時改定の確認も忘れずに行ってください。
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