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パート職員の働き方(扶養の範囲内と社会保険加入)について

多くの保育園や幼稚園、こども園等には、パート職員がいます。保育士や保育教諭の有資格者として働いている方や、清掃や保育補助としてのサポート業務を行っている方など様々です。

こうした方々から、よく質問に上がるのが、「扶養の範囲内で働くにはどうしたらいいか?」「なるべく手取りが多くなるように働くにはどうすればいいか?」といったような質問です。

ご自身で健康保険・厚生年金に加入したり、国民健康保険・国民年金保険料を負担しない「扶養の範囲内ギリギリで勤務したい」という方は多いのですが、扶養枠内でパート職員として働きたいという希望に対して、今後社会保険の適用拡大によりそれが叶わなくなるような、大きな変化があります。

たとえば、一般的な保育園等経営の法人は以下となります。

現在の社会保険加入者が501人未満(令和4年10月からは101人未満)の法人の場合】《適用拡大:対象外》

 

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① 年間収入130万円(交通費を含めて月108,333円)以内に抑えた労働契約と実態の場合

    • 配偶者の扶養に入ることができます。
    • ご自身で社会保険等に加入しないため、勤務した分の給与額の大半が手取りとなります。

※週20時間以上勤務する場合は、雇用保険加入により保険料が控除されます。
※収入によっては、所得税、住民税は負担します。

1月に勤務可能な時間数は、時給の高い低いによって変わってきますが、年収が130万円未満になるよう調整しながらの勤務となります。

② 年間収入は130万円以上となるが、”週30時間未満”の勤務の場合

年収が130万円を超えるため配偶者の扶養に入ることはできません。

一方で、労働時間が短い為、ご自身で会社の社会保険に加入することもできません。その為、ご自身で、管轄の市町村に行き、国民健康保険、国民年金に加入することになります。国民健康保険料、国民年金保険料は全額自己負担となります。

こちらに当てはまる方は、時給が高い方(たとえば1500円)で労働時間も多めの方です。1500円×月間100時間=15万円&通勤手当、となるような方です。

③ 週30時間(正職員の3/4以上)以上の勤務の場合

法人の社会保険に加入することになります。健康保険料、厚生年金保険料の半分は自己負担となり、将来、厚生年金を受給することができます。勤務時間や給与額の縛りなく勤務することができます。

①がよく言われる130万円の壁ですね。

②のポイントは”週30時間未満”です。年収が高いので配偶者の扶養からはずれるのですが、法人の社会保険加入の要件も労働時間が短い為入れません。①より多く勤務しても、国民健康保険料、国民年金保険料を支払う必要があるため、実際の手取り金額は少なくなってしまう可能性があります。時給の高い方に起こりがちなケースです。

そのため①の扶養の範囲内で勤務するか、③のように社会保険に加入できるまで勤務時間を延ばすかの選択をする方が多いです。もちろん、労働契約の変更については会社の同意が必要です。

しかし、社会保険の適用拡大の対象となる法人については、このパターンが変わってきます。とくに、令和4年10月以降は、大企業までの規模は無くても、以下のような状況が発生しやすくなります。

【現在の社会保険加入者が501人以上(令和4年10月からは101人以上)の法人の場合】《適用拡大:対象》

 

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上記①~③以外に、”週20時間”がキーポイントになります。

④ 週20時間以上かつ月88,000円以上(学生でなく、2カ月以上の労働契約)の場合

③と同じく、法人の社会保険に加入義務が生じます。

ところが、”週20時間”未満であれば、月88,000円(交通費を除く)~月108,333円(交通費込み)の範囲では、④と異なり、法人の社会保険に加入しなくてもよくなります。

例1)時給1,200円 週19時間の場合(1カ月84時間) 交通費 5,000円/月
 1,200円×84時間=100,800円 交通費5,000円 計105,800円>88,000円

②の場合はもちろん、③の場合でも”週20時間未満”なので法人の社保加入にはなりません。

例2)時給1,000円 週25時間の場合(1カ月100時間) 交通費5,000円/月
 1,000円×100時間=100,000円+交通費5,000円=105,000円<108,333円 

この場合には、①ですと配偶者の扶養の範囲です。

ところが、④ですと、年収は130万円未満にもかかわらず、”週25時間以上”かつ”月収88,000円以上”となるため、ご自身で社会保険加入をする必要があり、社保料によって、手取りが減ることとなります。

そのため、なんとか”週20時間未満”に抑えて配偶者の扶養にとどまりたい、と考えるパート職員が多いのではないかと考えます。

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2年後の2024年10月からは、社会保険加入の職員数51人~100人の法人も適用拡大の対象となります。現状の働き方では、扶養の範囲にとどまることが非常に難しく、労働時間を抑える希望が増えてくるのではないでしょうか。

事前にパート職員と今後の働き方について話し合っておかれるとよろしいかと思います。

※適用拡大については、コラム「社会保険の適用拡大について」をご参照ください。

※会員相談ひろばにも、扶養と適用拡大について質問を掲載していますのでご参照ください。

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