会員相談ひろばQ&A

処遇改善を行うために、年収を130万以内におさえているパート職員の時給を上げたいが、その分働く時間が短くなってしまう。「扶養枠内」の仕組みはずっと続きますか。

Q:ご質問詳細

パート職員で、年収を130万以内におさえて配偶者の扶養に入っている方がいます。処遇改善を行うために時給を上げたいのですが、高くなった時給のために働く時間が短くなってしまいます。この「扶養枠内」という仕組みは、ずっと続きますか?

 

A:質問の回答

「配偶者の扶養の範囲内で働きたい」というパート職員さんのご相談は多く受けます。

配偶者の被扶養者となる要件は、1年間に見込まれる年間収入が130万円未満(通勤交通費含む)であって、月額に換算すると108,333円です。

そして、月額108,333円が3カ月以上続くようであれば、扶養を抜けてご自身で社会保険に加入する必要があります(60歳未満の場合)。

そのため、扶養の要件ギリギリで勤務している方の時給や手当を上げてしまうと、働く時間が短くなってしまいます。

残念ながら、この要件は健康保険法、厚生年金保険法で定められているため、法律の改正がない限りは今後も継続されます。ただし、「扶養枠にとどまりたい」と思っても、その範囲は狭まってきている傾向です。

質問者様の法人の規模がわかりませんが、社会保険の適用拡大が段階的に進んでおり、労働時間が短いパート・アルバイトの方も社会保険の適用になります。

  • 2022年10月から社会保険加入の職員数101人~500人の法人
  • 2024年10月から社会保険加入の職員数51人~100人の法人

すなわち、2年後には社会保険加入者が51人以上の会社は、扶養枠内にとどまりたい職員の多くは社会保険加入の対象者となりえます。

具体的に適用拡大に該当する場合は、以下の要件全てに当てはまるパート・アルバイトの方も社会保険に加入する必要があります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 月額賃金が88,000円以上(賞与や割増賃金、通勤手当等は含みません)
  3. 2か月を超える雇用の見込がある
  4. 学生ではない
  5. 年収換算では106万円となります。現在、配偶者の扶養に入っている方も上記要件に当てはまる場合は、配偶者の扶養を抜けて、ご自身の社会保険に加入する必要がでてきます。

詳しくは、コラム「社会保険の適用拡大について」をご参照ください。

加えて、毎年10月には最低賃金の改定があります。すでに令和3年の東京では最低賃金が1041円です。

仮に週20時間で月に90時間程度勤務すると、93,690円。これに通勤手当を加えると更に上昇しますので、ほんの少し多く働くだけで扶養枠を超えてしまいます。

また、正職員と同等の仕事をしているパート職員の場合は、同一労働同一賃金の「正職員との不合理な待遇差を禁止」にも注意する必要があります。

扶養枠内にとどまりたいから、低めの時給に抑えたいという場合は、勤務時間や役割、仕事内容によって正職員との違いがあることを明確にし、その違いの範囲内で給与額も考えてください。すなわち、簡易的な業務しかお任せできないということになります。

こうした観点から「扶養枠内にとどまりたい」という方は非常に働きにくくなってきています。

今後、適用拡大により社会保険の加入要件が広がることも踏まえ、パート職員にどう活躍してもらうのか、働き方や仕事内容を検討されてみるのもよろしいかと思います。

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