<社会保険適用拡大>企業規模要件撤廃のスケジュール
保育園の経営において、保育士や保育補助、調理員といった短時間労働者(パート・アルバイト)の存在は欠かせません。現在、こうした方々が社会保険(厚生年金・健康保険)に加入するかどうかを左右する「企業規模要件」が、今後約10年をかけて段階的に撤廃されることが決まっています。
「うちは小規模だから関係ない」と思っていた園にとっても、避けては通れない大きな転換期がやってきます。本コラムでは、2035年までのスケジュールと、園として今から意識しておくべき実務的なポイントを解説します。
1. 企業規模要件とは?今後の段階的な撤廃スケジュール
パート・アルバイトなどの短時間労働者が社会保険に加入するかどうかは、法人の「従業員数(厚生年金被保険者数)」によって決まっています。
今後はこのハードルが段階的に下がり、最終的には「従業員の人数にかかわらず、週20時間以上働けば全員加入」という仕組みに移行します。
適用拡大のスケジュール

このスケジュールを見ると、現在50人以下の小規模な園であっても、 2035年にはすべての園が「週20時間以上」の職員全員を社会保険に加入させる義務 が生じることがわかります。
2. なぜ今、要件が撤廃されるのか?
国がこの施策を進める背景には、大きく2つのねらいがあります。
- 働き方に中立的な制度づくり
「あの園は規模が小さいから社会保険に入れない」といった、勤務先の規模による格差をなくすためです。働き手が、社会保険の有無を気にせずライフスタイルに合わせて職場を選べる環境を目指しています。 - 人手不足解消と「働き控え」の防止
いわゆる「106万円の壁」などを意識して勤務時間を調整する「働き控え」は、深刻な保育士不足に拍車をかけています。社会保険の適用を広げることで、将来の年金額を増やし、病気や怪我の際の保障を厚くすることで、 安心して長く働ける環境 を整える狙いがあります。
3. 「手取り減少」を防ぐ小規模園への支援策
社会保険への加入は、労働者にとっては「手取り額の減少」、園にとっては「法定福利費(社会保険料の会社負担)の増加」という不安要素を伴います。特に小規模園への影響を考慮し、以下のような 特例的・時限的な支援策 が用意されています。
【3年間の特例的支援策】
従業員数50人以下の企業などで、新たに社会保険に加入する短時間労働者(標準報酬月額12.6万円以下)を対象に、 事業主が負担を肩代わりして労働者の手取りを減らさない措置をとった場合、その追加負担分を制度全体で全額支援する 仕組みです。
これにより、移行期の数年間は労働者の社会保険料負担を抑えつつ、スムーズに社会保険加入へと舵を切ることが可能になります。
4. 園が今から取り組むべきこと
保育現場はシフト制で動いており、一人ひとりの労働時間の変動が運営に直結します。今回の法改正に向けて、以下の準備が必要です。
- スタッフの労働時間の再確認
現在、週20時間前後で働いているスタッフが何名いるか、将来的にどのタイミングで対象になるかをリストアップしましょう。 - 「働き方」に関する意向調査
「手取りが減っても将来のために社会保険に入りたい」という方もいれば、「配偶者の扶養内に留まりたい」という方もいます。早い段階で面談を行い、個々の希望を把握しておくことが、急な離職を防ぐ鍵となります。 - 採用戦略のアップデート
「社会保険完備」は、求職者にとって大きな魅力です。「福利厚生が充実した、長く働ける園」としての園の魅力に繋げることも検討しましょう。
まとめ:10年を見据え運営計画を
企業規模要件の撤廃は、今後約10年をかけて確実に進んでいきます。直前になって慌てるのではなく、スケジュールを逆算して、人件費予算や採用計画に盛り込んでいくことが重要です。

