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【こども性暴力防止法連載コラム】第6回:
徹底解説!防止措置としての「配置転換・解雇」を支える労働法制と適正手続

こども性暴力防止法に関するコラム第6弾をお届けします。

今回の法制度において、経営者・園長先生方が最も頭を悩ませるのは、「こどもの安全を守る義務」と「労働者の権利」のバランスをどう取るかという点です。ガイドラインでは、性犯罪歴がある場合だけでなく、日々の「不適切な行為」に対しても厳しい措置を求めています。

社労士の目線で、後から「不当解雇だ」「不当な配転だ」と訴えられないための法的リスク管理について、詳しくお伝えします。


第6回:徹底解説!防止措置としての「配置転換・解雇」を支える労働法制と適正手続

「こども性暴力防止法」に基づき、児童対象性暴力等の「おそれ」があると認められる場合、事業者は対象業務に従事させない等の「防止措置」を講じる義務があります。しかし、これらは労働契約の内容を大きく変える「人事権の行使」です。法的なトラブルを防ぐためには、適切な手続きを踏む必要があります。

「おそれがある」と一口に言っても、背景は様々です。ガイドラインでは、その状況に応じた適切なステップが示されています。

1.「おそれ」の判断基準

まず、どのような状態を「おそれがある」と判断するか、ガイドラインの基準を確認しましょう。

①犯罪事実確認の結果(特定性犯罪事実該当者)
過去のエビデンスから再犯リスクが高いとされる期間(刑の執行終了から20年等)にある者は、原則として「おそれがある」と認める。

②被害があったと申出があった期間(暫定的な対応)
事実確認ができるまでの暫定的な期間において「おそれがある」と認める。

③児童対象性暴力等の認定
調査等の結果、児童対象性暴力が行われたと合理的に判断された場合、「おそれがある」と認める。

④不適切な行為の認定
調査等の結果、児童対象性暴力等には該当しないが不適切な行為が行われたと合理的に判断される場合、「おそれがある」と認める。

2.「おそれ」のパターン別、講ずべき防止措置

①特定性犯罪事実があった場合(犯罪事実確認で「該当あり」)
原則として、その従事者を対象業務(こどもに接する業務)に従事させないことが求められます。

②児童や保護者から被害の申出があった場合(調査中)
事実確認ができるまでの暫定的な措置として、「接触の回避」を最優先します。
自宅待機命令や、一時的な別業務への割り当てが考えられます。

③調査の結果、児童対象性暴力等が行われたと合理的に判断される場合
原則、対象業務に従事させない措置を講じます。

④調査の結果、「不適切な行為」が認められる場合
初回かつ軽微: 指導や研修受講命令を行い、経過観察を行います。
重大、または改善されない: 原則、対象業務に従事させない厳しい対応が必要です。

3.労働法制に基づく防止措置の具体的運用

① 配置転換(職種・勤務地の変更)
「おそれ」がある場合、まずはこどもと接しない業務(事務職等)への配置転換を検討します。

  • 原則: 就業規則に配転規定があり、勤務地や職種を限定する合意がない場合は、事業者は労働者の同意なしに転勤や配置転換を命じることができます。
  • 留意点: ただし、採用時に「保育士としてのみ働く」という明確な職種限定合意がある場合、本人の同意なしに事務職へ変えることは、契約違反とされるリスクがあります。このため、トラブル防止には「個別的同意」を得るプロセスが推奨されます。

②内定取消し
内定者が、犯罪事実確認の結果、特定性犯罪事実該当者である場合、採用選考過程において以下の3つの対応を行っていた場合、経歴詐称を理由として内定取消の有効性が認められます。

  • 採用募集要項の採用条件に、特定性犯罪前科が無いことを明示する
  • 誓約書、履歴書等を通じて、特定性犯罪前科が無いことを書面等で確認する
  • 採用内定通知書等に内定取消し事由として「重要な経歴の詐称」を定め説明しておく
  • 留意点: 採用選考過程において明示的に特定性犯罪前科の有無を確認していなかった場合は、特定犯罪前科の事実のみを理由に内定取消しをすることが難しく、対象業務以外の職での採用の可能性も検討する必要がでてきます。

③試用期間中の解約
いとま特例が適用されることにより、対象業務に従事させた後に犯罪事実確認を行う場合があります。試用期間中に特定性犯罪事実該当者であることが分かった場合の対応として、就業規則に試用期間中の解約事由・懲戒事由として「重大な経歴の詐称等」を定めて職員に説明しておきましょう。

④ 懲戒処分・解雇
加害事実や重大な「不適切な行為」があった場合、最終的には解雇も視野に入ります。懲戒処分は、懲戒種別と懲戒事由を就業規則に定め、周知している場合に行うことができます。「重要な経歴の詐称」「刑罰法規に該当する場合」「企業秩序を乱した場合」「児童対象性暴力・不適切な行為を行った場合」等を定めて職員に周知しておきましょう。

  • 経歴詐称を理由とする場合: 採用選考時に「特定性犯罪前科がないこと」を確認していたにもかかわらず虚偽の申告があった場合、「重要な経歴の詐称」として懲戒解雇の有効性が認められやすくなります。
  • 不適切な行為を理由とする場合: 初回の軽微な不適切行為で即解雇は困難です。まずは「指導・研修受講命令」を行い、それでも改善されない、あるいは同様の行為を繰り返す場合に、段階的に厳しい処分を検討します。

【ポイント】
・事実確認(調査)においては、加害が疑われる者にも「弁明の機会」を必ず与えてください。一方的な決めつけは、後に処分の有効性を争われるリスクがあります。

ワンポイント・アドバイス

特に現職者について、過去の採用時に前科を確認していなかった場合、判明した事実のみをもって即座に解雇することは、社会的相当性を欠くと判断されるリスクがあります。

このような場合は、「まずは配置転換による安全確保」を優先し、それが困難な場合にのみ、法的根拠(適格性の欠如等)を整理して慎重に解雇を検討するという順序が大切です。

詳細については、ガイドラインP214~243をご参照ください。

こども性暴力防止法施行ガイドライン

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