【こども性暴力防止法連載コラム】第2回:保育の現場における児童対象性暴力と不適切保育の境界線
こども性暴力防止法に関するコラム第2弾をお届けします。
今回は、保育園や認定こども園の経営者・施設長のみなさまが最も気をつけるべき実務の核心、「児童対象性暴力」と「不適切な行為(不適切保育)」の境界線について解説します。
今回の法律の大きな特徴は、直接的な性暴力だけでなく、その前段階にある「不適切な行為」に対しても、事業者としての法的責任が問われる点にあります。
第2回:保育の現場における児童対象性暴力と不適切保育の境界線
「こども性暴力防止法」では、防ぐべき行為を大きく2つの階層に分けて定義しています。保育現場の実情に即して整理していきましょう。
1. 「児童対象性暴力等」とは(絶対に許されない犯罪行為)
これは、こどもに対して行われる犯罪的な加害行為そのものを指します。
- 性交等・わいせつな行為: 刑法や児童福祉法等に違反する不同意性交、不同意わいせつ、淫行など。
- わいせつ目的の面会、児童ポルノの所持等: 刑法や児童ポルノ法等に違反するわいせつ目的での面会要求や面会、児童買春、児童ポルノ所持・提供など。
- 盗撮・自撮り要求: 性的姿態の撮影や、SNSを通じた画像送信の要求。
- 悪質なセクハラ・言動: 性的羞恥心を害するような、こどもの心身に有害な影響を与える言葉による嫌がらせ。
これらは即座に法的・人事的な厳しい処分の対象となります。詳しくはガイドラインP16~19をご参照ください。
2. 教育・保育現場特有の「不適切な行為」とは(リスクの芽)
ガイドラインでは、児童対象性暴力等には該当しないが、業務上必ずしも必要な行為とまでは言えないものであって、当該行為が継続・発展することにより児童対象性暴力等につながり得る行為を「不適切な行為」と定義しています。
保育の現場では「親愛の情」や「必要な介助」との区別が難しくなりがちですが、客観的な「物差し」を持っておくことが不可欠です。
【保育・こども園での「不適切な行為」の具体例】
| 類型 | 具体的な例 |
|---|---|
| 私的な交流 | 保護者の承諾なく特定のこどもとSNSで繋がる、休日や放課後に私的に会う、不必要な送迎。 |
| 密室状態 | 用務がないのに別室に呼び出す、更衣室や宿泊行事のお風呂に不必要に入る。 |
| 不自然な身体接触 | 業務上必要ないのに膝に乗せる、必要以上に長時間抱きしめる、不必要なマッサージ。 |
| 特別扱い | 特定のこどもだけに金品を与えたり、過度に容姿を褒めたり、理由なく担当したがる。 |
| 排泄・入浴介助 | 本人が「一人でしたい」と意思を示しているのに無理に介助に入る、おむつ交換時に不必要に陰部に触れる。 |
詳しくはガイドラインP20~24をご参照ください。
3. 「重大な不適切な行為」と判断された場合
さらに悪質なケース(執拗な繰り返し、保護者の意に反することを認識しての行為など)は「重大な不適切な行為」とみなされます。この場合、性暴力そのものが確認されなくても、原則としてその従事者をこどもに接する業務から外す(配置転換等)ことが求められます。
4. 現場を守るための「社内ルール」の策定
ガイドラインでは「不適切な行為」を「一律にすべてダメ」とはしていません。未就学児に対して、信頼関係を築くための抱っこや着替えの介助は当然「業務」として認められます。
大切なのは、各園で「どこまでが適切な保育で、どこからが不適切か」を明文化し、周知することです。
ワンポイント・アドバイス
この法律のポイントは、「不適切な行為」があったと合理的に判断される場合、事業者には「防止措置(配置転換など)」を講じる義務が生じるという点です。
園として今すぐ取り組むべきステップは以下の3つです:
- 「不適切な行為」の独自定義: 自園の保育方針に合わせ、具体的に何が不適切な行為かを定める 。
- 服務規律への反映: 決めたルールを就業規則などの服務規律に明記し、従事者(保育職員)に周知徹底する 。
- 風通しの良い組織文化: 「同じこどもばかり抱っこしすぎてない?」と同僚同士で気軽に声を掛け合える環境を作ることが、職員自身を「冤罪」や「疑念」から守ることにも繋がります 。
「不適切な行為」への対処は、職員を単に責めるためではなく、園全体でこどもたちの安全を担保し、信頼される施設であり続けるためのものだと伝えていきましょう。
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