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災害時の賃金支払いについて

自然災害時が発生した時、園としてどのような対応をしたら良いのでしょうか。
突然起こる災害。地震だけでなく台風、河川の氾濫、暴風やそれに伴う公共交通機関の運休などに備えて、事前に取り決めをしておくことで無用の混乱を防げます。
それぞれのポイントに沿って解説していきますので、皆さまの園を想定しながら対策を考えてみてください。

【1.臨時休園等に備えて事前に決めておくと良いこと】

① いつまでに誰が休園を決定するのか(園長?法人?)
② 休園の連絡は誰がどのように行うのか(保護者への連絡は?職員への連絡は?)
③ 休園の場合でも保護者対応や安全確認のために、出勤させる職員はいるか
④ 登園後、急に警報が出た場合にはどのような対応をするのか
(職員の居住地、家族構成によって、誰が最後まで対応できるのか。また、誰を早退させるのか)
⑤ 帰宅困難になった場合の園児や職員の対応 
など

 

【2. 開園時間前(職員の出勤時間前)に警報等が発生し、自治体等の判断に基づき、その日1日臨時休園を決定した場合】

労働基準法に「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない」とあります。
簡単に言うと「会社の責任で休業する場合は60%の休業手当が必要」いう内容です。
しかし、大地震などの災害、電車の運休で登園できない、停電などで園が運営できないなどやむを得ない場合の休園については、「使用者の責に帰すべき事由」にあたりません。
ですので、その日の分はノーワークノーペイ(働いていない分は支給なし)として欠勤控除したり、賃金を支払わなかったりしても、法律上問題ありません。

こうした法律上の大前提を踏まえた上で、「補助金(運営費)」という視点で見てみましょう。
企業主導型保育事業は「警報レベル3」以上の休園については運営費の引き下げはないと決定しています(2021年8月現在)。
また認可保育事業の場合、各管轄の自治体に判断はゆだねられますが、同じく「警報レベル3」以上の休園に関しては補助金の引き下げはしないという自治体が多いようです(詳しくは各自治体へご確認ください)。

そうすると、この休園日については「補助金(運営費)」等が減らない関係から、欠勤があっても全額賃金を支給するという判断をする園もあります。
一方、上段の1-③(休園時に出社した社員がいる)場合、出社した職員との公平性を考慮し、出社職員は100%支給し、休んだ職員は減額するという考え方もあるでしょう。

法律を上回る部分については園が自由に決めることができますが、きちんと職員へ説明できるように、根拠を整理しておきましょう。

One Point!

企業主導型保育事業の場合「警報レベル3」以上の休園は運営費の引き下げがありませんが、月次報告に記載が必要です。
在籍児童入力画面に「災害欠日数」欄がありますので、忘れずに入力しましょう。

 

【3. 開園の途中に警報等が発生し、自治体等の判断に基づき臨時休園等を決定した場合】

急な悪天候や地震などにより、会社は職員の安全配慮義務の観点から、全員または一部の職員を途中で帰宅させる判断をする場合があります。その際、賃金はどうしたらよいでしょうか。

①前段の「使用者の責に帰すべき事由」でない場合(災害、運休など)
 →前段同様ノーワークノーペイで賃金を払わなくても問題ありません。

②運休等も決まっておらず警報レベル3ほどではないが、警報が出ていて予防的に職員にも帰宅命令・指示を出す場合
 →予防的な帰宅命令・指示であれば、法的には労働基準法26条の「使用者の責めに帰すべき事由」と判断されるケースもあり、その日の賃金が、平均賃金の60%に満たない場合は補填が必要です。「会社が命令・指示をした」ことがポイントです。

③運休等も決まっておらず警報レベル3ほどではないが、警報が出ていて、予防的に職員にも「帰りたかったら早退してもよい」と職員の判断にゆだねる場合
 →早退は職員の任意なので、法的には「使用者の責めに帰すべき事由」とならず、ノーワークノーペイで早退部分に関しては、賃金の補填は不要です。(実際に勤務した部分だけ支払えばよい)

 

急に発生する災害、職員の対応を事前に決めておくことで、園児への対応に集中できます。
この機会に自園の対応について考えてみましょう。

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