【こども性暴力防止法連載コラム】第5回:
組織で守る!「安全確保措置」 実務の進め方
こども性暴力防止法に関するコラム第5弾をお届けします。
これまでは「誰の犯罪事実を確認するのか」「どう申請するか」という入口の話が中心でしたが、この法律の真の目的は、「日々の運営の中で、いかに性暴力を防ぎ、起きた疑いにどう立ち向かうか」にあります。
労働法制とこどもの安全を両立させるための「安全確保措置」のポイントをまとめました。
第5回:組織で守る!「安全確保措置」 実務の進め方
法律では、犯罪歴の確認だけでなく、事業者が講ずべき一連のサイクルを「安全確保措置」として義務づけています。 安全確保措置については、「教育・保育等を提供する事業者による児童対象性暴力等の防止等の取組を横断的に促進するための指針(横断指針)」 に詳細な対応方法が記載されていますので、横断指針もご確認ください。
横断指針はこちら1. 未然に防ぐために日頃から講ずべき措置
参考:横断指針P17~31
- 研修: 全ての対象従事者に対し、性暴力の要因やこどもの権利、不適切な行為の範囲などを学ぶ研修を定期的に受講させなければなりません。
- 服務規律等の整備・周知: 対象従事者や児童性暴力・不適切な行為、配置転換や懲戒処分などを明記し、法的なリスクに備えておきます。※詳しくは、第6回のコラムをご参照ください。
- 施設・事業所環境の整備: ハード面でも、死角をなくすための防犯カメラの活用や、巡回の強化など、複数の目が行き届く環境づくりが求められます。
- 児童等や保護者への教育: 児童等がこどもの権利や性に関するルールについて知ることは、被害の未然防止や早期発見に繋がります。児童の発達段階に応じた教育を行うとともに、保護者等にも周知・啓発を行っておくことも重要です。
2. 児童対象性暴力等を把握するための措置
参考:横断指針P32~43
- 早期把握: 児童等への日常的な観察に加え、発達段階に応じた定期的な面談やアンケートを実施します。
- 相談体制: 園内に相談員を置くだけでなく、外部の専門窓口(ワンストップ支援センター等)も周知し、こどもがSOSを出しやすい環境を整えます。
3. 児童対象性暴力等が疑われる場合等に講ずべき措置
参考:横断指針P44~
①初期対応(事実確認の端緒と直後の動き)
疑いが生じた直後は、「こどもの安全確保」と「証拠の保全」が最優先事項です。
- 端緒の把握: こども本人からの訴え、保護者からの指摘、職員の目撃、またはSNS等の情報など、あらゆるサインを軽視せずキャッチします。
- 安全の確保: 対象と疑われる職員を、即座にこどもから物理的に引き離します。配置転換や自宅待機命令などを検討します。
- 組織的対応の開始: 一人の判断で動かず、あらかじめ決めた「対応チーム(責任者、相談窓口担当等)」で情報を共有します。
- 記録の徹底: いつ、誰が、何を言ったか、どのような状況だったかを、主観を交えず詳細に記録します。
②調査(事実関係の解明)
調査は、公平性を保ちつつ、被害児童への「二次被害」を防ぐ細心の注意が必要です。
- こどもへのヒアリング: こどもの記憶は非常にデリケートです。何度も同じことを聞き返して傷つける「二次被害」や、誘導尋問による「記憶の汚染」を防ぐため、初期対応は最小限にとどめ、速やかに警察や行政と連携することが鉄則です。こどもへのヒアリングは、専門知識を持つ者が行います。
- 対象職員へのヒアリング: 弁明の機会を与えつつ、事実関係を行います。他の職員や保護者への口止めを命じるなど、証拠隠滅を防ぐ対応も行います。
- 客観的証拠の収集: 防犯カメラの映像、業務日誌、PCやスマホのログ、周囲の職員・こどもの証言などを集約します。
- 関係機関との連携: 自力での解決に固執せず、児童相談所や警察、市区町村の窓口へ速やかに相談・通報を行います。
③ 調査を踏まえた対応(判断と措置)
事実関係が判明した(あるいは疑いが濃厚になった)段階での措置です。
- 就業規則に基づく処分: 事実が認められた場合、懲戒解雇を含む厳正な処分を検討します。性暴力は「重大な服務規律違反」に該当するため、毅然とした対応が求められます。
- 再発防止策の策定: なぜ防げなかったのか(死角があった、1対1になる状況があった等)を分析し、施設運営のルールを見直します。
- こども・保護者へのケア: 継続的なカウンセリングの提供や、心のケアについて専門機関と連携してフォローします。
- 関係機関への報告: 法に基づき、事実関係や講じた措置について適切に報告を行う義務があります。
ワンポイント・アドバイス
安全確保措置は「一度決めたら終わり」ではありません。事業者は、これら全ての実施状況を年に一度、こども家庭庁へ「定期報告」しなければなりません。
現場で混乱が起きないよう、以下の3点を今すぐ確認しましょう。
- 「対処規程」の作成: 疑いが出た際の報告ルートや調査手順をマニュアル化しておきましょう。認定事業者は「児童対象性暴力対処規程」を作成・遵守する義務がりますが、学校設置者等も作成しておかれることをお勧めします。
- 就業規則の改訂: 懲戒事由に「児童対象性暴力等」や「不適切な行為」の追加、配置転換や自宅待機命令等の規定も整備しておきましょう。
- 証拠の保全: 万が一の際、従事者を不当な疑いから守るためにも、防犯カメラ等の運用ルールを明確にしておきましょう。
監査等でも確認される運営管理規程についても、安全確保措置の項目を追記するなど、見直しを行っておきましょう。
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